努力の男・田中達也を垣間見た記事 【浦和レッズ】

寝つきが悪いので、いろいろ探してみたら達也関連でこんな記事があったのでご紹介。気休めにならないかと思うけど、達也のひととなりを垣間見れる文章かな、と。

 今はただ回復を祈りつつ。

西日本新聞WEB
師は見た アスリートの素顔vol.2
《7》男子サッカー・田中達也選手 古沼貞雄 帝京高総監督
(上)天性の俊足で頭角現す


 高校サッカー界の名将でも、その才能を初めは見抜けなかった。全国高校選手権で戦後史上最多タイの6度の優勝を誇る帝京高の総監督・古沼は、アテネ五輪出場の立役者となったU―23日本代表のFW田中の第一印象から、強いインパクトは感じなかった。
 「最初の出会いは達也(田中)が中学3年でうち(帝京高)の練習に参加したときだった。体は小ぶりで、選手としてのレベルも高くない。伸びても2番手あたりかな。正直獲得するかどうか迷った」

 山口県周南市出身の田中に親元を離れて上京するだけの能力はないと、古沼はみた。だが、思わぬ縁が2人を結びつけた。田中の友人の兄と、同姓同名の田中龍哉(たつや)の同郷の2人が、同高に進学していた。ともに年齢は田中より3つ上。2002年の日韓ワールドカップで活躍した中田浩二(鹿島)と同級で、全国高校選手権大会で準優勝を経験した。

 「達也の知人、それも同姓同名の選手がうちのサッカー部にいる。さらに、山口県の小・中学生の指導者からも『本当にいい子ですから』と熱心に勧められたことも心を打った。これも私と達也が出会う運命にあると思った」

 田中が入学した年、古沼にはある考えがあった。下級生に経験を積ませるため、全国高校選手権の出場常連校の指導者の同意を得て「1年生大会」を企画したのだ。その大会の6試合で、帝京高は無敗。田中は全試合でゴールを決め、無限の可能性を見せた。

 「ピッチは芝がはげ、凸凹状態。その中でスピードを生かしたドリブルで点を挙げる。その技術の高さには驚かされた」

 古沼は田中が1年の秋、すぐにトップチームへ昇格させた。起用法はスーパーサブ。フル出場への体力的な不安があったことも確かだが、天性のスピードは相手が疲れが出始めた後半から威力を発揮すると考えたからだ。その効果はすぐに表れた。1年で出場した全国高校選手権では準優勝と確実に成長の軌跡を残し始めた。

 「よしこれなら、日の丸を背負う選手になれる。どう育てようか…」

 古沼が育成法に考えを巡らせている最中に、アクシデントが田中を襲った。右足首靭帯(じんたい)断裂。この大けがが“天才ドリブラー”を生み出す礎となった。 (敬称略)


《8》男子サッカー・田中達也選手 古沼貞雄 帝京高総監督

(下)大けがを乗り越え進化



 アクシデントが田中を襲ったのは、高校2年の夏だった。群馬県藤岡市での大会。予選リーグの熊本国府(熊本)戦で、右足首じん帯を断裂。すぐに人工じん帯を付ける手術を受けた。
 「けがをしても落ち込んでいる様子はなかった。『右足はどうか』と聞くと『人工じん帯を入れました』とケロリとしている。彼はいつも前を向いている。けがをしてもどん欲に練習に取り組んだ」

 帝京高が全体練習を終えるのは午後6時ごろ。それからは有志による居残り練習が始まる。その輪の中にいつも田中がいた。右足首が完治していなかった時期でも、同じタイプの選手と交代しながらドリブルで相手を抜く練習を2時間、ときには3時間に及ぶこともあった。167センチの小さな体をハンディにしないため、筋力トレーニングも欠かさず続けた。

 「達也は足のけがのため、だましだましプレーしていた。そのせいもあって、チームの成績は振るわなかった。でも、本人は確実に成長し続けた」

 全国高校選手権では2年時に準々決勝で敗退。3年では、予選で敗れてしまった。“古沼サッカー”は速いボール回しで展開することが基本。だから、選手にはドリブルを奨励していなかったが、自らの指導方針に合わなくても、田中の才能は認めざるを得なかった。

 「彼には、相手のペナルティーエリアが見えたあたりからボールを持つことを許した。逆にエリア内でパスをすると怒鳴りつけた。今まで育てた選手の中でも珍しい存在。何十年に1人出るか出ないかの逸材だ」

 実力が開花したのはJ1浦和へ入団してからだった。昨年のナビスコカップではチーム初の優勝の原動力となりMVPを獲得。「ニューヒーロー賞」にも輝いた。3月のアテネ五輪アジア最終予選では6試合全試合に出場し、2得点3アシストと日本を五輪の聖地へと導いた。

 「彼は誠実で努力家。くじけてもくさるようなやつではない。常にライバルたちと切磋琢磨(せっさたくま)して、アテネではより輝くことを期待している」

 小さな体には逆境を乗り越え、何事にも負けない力が詰まっている。それを知る古沼は、田中が五輪の舞台でさらなる飛躍を見せると信じている。 (敬称略)


【追記】
そして今朝のニッカンです。

今朝のニッカンスポーツ紙面より

右足腓骨 骨折
ジーコ日本ショック!!W杯ピンチ
達也骨折(一番でかい文字)


 浦和FW田中達也(22)が、右足費骨骨折と足首脱臼の大けがを負った。柏戦の後半13分、相手DFの後方からのタックルを受け負傷。2分後に退場し、救急車で運ばれた。前半23分にポンテの先制ゴールをアシストした。後半4分にはゴールも決め7−0大勝へ導きながら思わぬアクシデント。今季、残り試合の出場は絶望的で、来期にも影響する可能性がある。目標だったW杯ドイツ大会出場も事実上難しくなった。

「今日精密検査」

 いけいけムードに水を差された。4−0の後半13分。最前線で田中がボールを受けた瞬間、DF土屋が後ろからタックルに来た。よけ切れず、勢いのついた土屋の左足と地面に右足が挟まれる格好で倒れた。悲鳴が上がる。「ファウルじゃない」と怒っていた土屋は、変な方向に田中の足が曲がっているのを見て、顔が青ざめる。最後は涙目になっていた。

 そのまま担架で運ばれ、ロッカールームへ。右足首を脱臼していたが、控室でチームドクターの応急処置で足首は元通り戻った。試合中に埼玉県内の病院に運ばれた。エックス線検査の結果、右足腓骨骨折が判明した。病院からの電話を受けた森GMは「今季は無理だね。来期の開幕に間に合うかどうか。じん帯も大丈夫じゃないでしょう」と悲観的な見方をした。今日MRIなどの精密検査後、全治などの詳細が発表される。