6/19 チームドクター仁賀先生の講演会レポ 【浦和レッズ】
おいらは旅に出てしまったので、参加した中の人(違)Kさんのレポをどうぞ〜。
なかなか興味深い内容だったようだ。行けばよかったなあ、と激しく後悔。
−−−−
今日は、レディースの試合やクラブユース選手権関東予選と、
浦和絡みの試合があったのですが、
僕は起きたら1時すぎてて断念…orz
なので、北浦和で行われる浦和のチームドクター仁賀先生の
講演を聴いてきました。
http://members3.jcom.home.ne.jp/urasupo/urasupojuku4.pdf
http://www.ninomiyasports.com/xoops/modules/news/print.php?storyid=3561
この講演、スポーツ指導者、トレーナー、医療関係者のための勉強会的なものなようで、ちょっと場違いかなあと思いながら会場入りしました。
会場に到着して気づいたのは以下の点です。
・女性が妙に多い(子供がサッカーやってるお母さん方の様子)
・子供が妙に多い(いかにも運動部の子供たち…レッズ関係だから?)
・いろんな関係者が来ている(印象的だったのは所属がJ1某チームの人…)
・スタッフは、人の入りと客層の違いにとまどっている…
講演は以下のスケジュールで行われました。
18:35 主催の戸苅先生(仁賀先生の師匠筋)による仁賀先生の紹介
18:40 仁賀先生による一言
18:45 成長期のスポーツ障害(30分)
19:15 怪我への初期治療(10分)
19:25 休息(5分)
19:30 プロ選手の障害(60分)
20:30 質疑応答
20:45 講演終了
ということでタイムスケジュールごとに区切って書きだしていきます。
■仁賀先生の紹介
主催の戸苅氏から、仁賀先生のプロフィール紹介。日本でも数少ないチーム専任のドクターでスポーツ整形、特に膝や間接部に対する専門家として名高いという説明。 昭和32年生まれで…と一通りの経歴説明。
ちなみに、仁賀先生がサッカーをされることを紹介、浦和のコーチに言わせると「最近で一番伸びた選手?それは仁賀先生ですよw」と言われるぐらい上達中とかw
■仁賀先生から一言
ここで仁賀先生登場。
昭和32年生まれというから48歳?のはずだけど、遠目からはそんなお年には見えない若さ。学者・医者先生という感じ。
実際、講演を通じて感じたのですが、物腰が柔らかく決して断定口調では話さずに可能性に含みを持たせた話し方をされます。
また質問に対しても、実際に見ないとわからないことははっきり言い、自分が納得されない意見にははっきり異議を指摘します。個人的にはかなり好印象のお医者さんです。こういう先生なら全面的に信用できるというタイプです。
聞いてる僕たちに言い聞かせるように手術して必ずうまくいくわけではなく、決して医者が万能ではないことを強調しておられました。
ここで、パワーポイントを使いながら本日の講演メニューを紹介されました。この講演では子供から専門家まで幅広すぎるので難しいですが、休息前まではわかりやすさ優先で、休息後は専門家向けに話すとのことでした。
このパワーポイントの書類、かなり浦和関係者の画像が使われており、その関係者のセリフが書き込まれているのが結構面白かったですw
このメニューのところではオフトの画像が…
仁賀先生曰く、彼は練習時間とメニューを必ず守る男だったが、私は自信ないかも…とのことw
仁賀先生の話にはオフトの話がたびたび出てきます。仁賀先生にとって相当印象の残っている様子で、それはある理由が…あとで説明しますね…
■成長期のスポーツ障害
小学校低学年から成人までの子供たちのスポーツ障害についての講演でした。
・成長曲線の違い
最初に成長曲線の図を提示
リンパ組織・神経組織は早くから完成するのですが、筋肉・骨格はかなり遅い成長なのでユース世代では、体力トレーニングは危険との話。
これが障害を引き起こす大きな原因である。技術・感覚・戦術をここで学ばせるべき。特に技術は吸収が早い。
これらはサッカーに限らない話。
ただ器械体操・新体操は、残念ながらスポーツ医学と相容れないので、難しい(練習に休みはなく、一日8時間以上の練習時間とか…)。サッカーはスポーツ医学と相性が良く、恵まれているといえる。
・成長期ごとの障害の性質の違い
小中学校の障害は47.9%がoveruse…いわゆる使いすぎ。筋力がないのでそれ以外の怪我は少ない。高校生はoveruseは14.4%になり外傷が中心になる。
子供は大人とは違うと強調。たとえば成長軟骨というのが子供にはあり、これがoveruseで障害を起こしやすい。overuseは早期発見できれば、練習を一定期間休むことで回復できる。またこういった障害は、スポーツを行うなら誰でも起こることなので、発症しても焦らないこと。
ちなみに子供のスポーツでは成長の早い子供を酷使すれば勝ちは得やすいが、子供は障害をおこすし、ろくなことはないと強調。
・子供は大人を小型にしたものではない
先にもふれたが子供は大人よりも障害をおこしやすい。なのでメニューは大人を元にしないこと(単純に量を減らすだけではダメ) 。子供のころは1週間に2−3日の練習プラス1試合ぐらいが目安。1回の練習は2時間以内。筋力トレーニングは成長期終了後でよい。
ここで元大宮監督のピム氏のエピソードを紹介。
少年サッカーの練習を見て、「あれは何のスポーツの練習だ?サッカー?あんなトレーニングは必要ない!」
・指導者の不足
各年代のサッカー部の部員数を紹介
小学校:43.7人
中学校:54.1
高校:74.1
大学:42.9
社会人:30.8
指導者一人あたりの生徒数…
ドイツの場合
20人以下が90%
日本の場合
20人以下が60%…さらに50人を一人で見ている場合も…
とにかく指導者が足りない。指導者が多ければ、子供たち一人一人に目が届き、障害を早期発見しやすい。なのでJの100年構想はイイ!
■怪我の初期治療
ここから浦和の選手の画像がいっぱい出てきはじめますw
基本的には怪我に対してはアイシングが基本だが、盲信しないでほしいとのこと。初期治療は以下の4つ(RICE)が大切
Rest(局所安静)
Icing(冷却)
Compression(圧迫〜素人は危険もあるので注意)
Elevation(挙上〜心臓よりも上に患部をあげる)
治療にかけられる時間で治る時間は変化する。プロスポーツ選手は一日中できるが、一般人はそうはいかない。学校や会社に行くことで、治療できずに回復が遅れる可能性もあることを注意すべき。
ここで重要な挙上の説明…悪い例の写真が表示されます…。ことごとく患部を下におろしている写真。捻挫はバケツに氷入れて冷やしても、心臓より下の位置に置きっぱなしなのは、よくないというのは実生活に役立ちそう…。
■休息
大原で給水する浦和の選手の写真…仁賀先生、いつ撮ったのよ、これw
ということで5分の休息
■プロ選手の障害
「医療機関で治療して、時間とともに治り復帰するのは当たり前」 ということをサッカー関係者に言われたことがあると紹介。我々の目的は「元のレベルに」、「早く」、「再発しないように」、復帰することが目的とのことでした。
高いレベルを目指す選手には独力で取り組むには限界がある。医師とトレーナーの効果的な援助が有用とのこと。
このへんは本当によくわかります。浦和の選手の大半が短期間で負傷から復帰できるのは仁賀先生のこのモットーのおかげですね。浦和にリハビリ専門の野崎トレーナーがおられることも、仁賀先生の思想にもとずくもので、この連絡を密にしなければと強調されていました。
(1)ACL損傷
いわゆる前十字靱帯損傷のことです。
サッカー選手にとって常にありえるこの負傷…浦和の選手も負傷しておりますね…。
負傷の原因の多くが予想しないボディコンタクト。負傷の種類に関係なく、ボディコンタクトに対する準備を身につけることが重要というお話でした。
長谷部のことを例に出し、ボディコンタクトを恐れずに積極的にぶつけに行くぐらいになったのが、去年の急成長の理由の一つと言っておられました。
次にACL再建後のスポーツ復帰の話。
1980年代は復帰には不確実な要素が多かったのですが1990年代以降は確実になり、早期リハビリ(1ヶ月で階段をのぼれ、半年で復帰)が可能になりました。
その例としてラウル、デルピエロ、マテウスなどの名選手があげられています。
その後、選手のリハビリの様子が写真や動画で表示され、説明が…
・リハビリには「メディカル」と「アスレティック」が存在
・意識の高い選手はリハビリ中でもルックアップなど実戦のことを考える。
この差は大きい
・ラダーを並べた練習などの紹介〜オジェックは否定的
(この練習はアヤックスでもやってると知っていたので、
俺の中でオジェック株ダウンw)
・5〜6ヶ月での実戦復帰は議論の余地があるところ。
生物的には2年たっても同一組織にはならないが力学的にはいける。今までの経験上、仁賀先生はこのスケジュールを採用している…
<萌えポイント>
ここでパワーポイント上のムービーを再生しようとして何度もフリーズ発生。
仁賀先生の「あっ!」という中年男性にあるまじき高い声に俺は萌えましたw
(2)内側側副靱帯損傷
保存療法でテーピングを行う場合が多いのですが、
そのテーピングによるポジションの意識の違いの紹介がありました。
FW テーピングをこのまず再受傷しやすい(感覚を大切にする)
DF テーピングして早期に復帰を希望
MF 両者の中間
GK 試合だけなら一週間以内で復帰(医者から見ておかしい人種。
怪我をしても痛がらないことが多いw)
仁賀先生、GKたちを化け物だと思っています(;´Д`)
誰のことなのかしらんw
<オフト話>
仁賀先生曰く、オフトは医者レベルの医療知識を持っていて、特に現場から見た意見は医者を圧倒することもあるらしいです。
先生曰く「すごいオッサン」(;´Д`)
肝が据わっているのか、こちらを信頼してくれているのか、とにかく印象的な判断をしていたとのこと。(俺の中でオフト株上昇。ただの狸じゃなかったな…やっぱ)
(3)鼠
剥離した骨の欠片が、関節に入り込むなどして痛みを発生させる通称「鼠」
これについては伸二の手術を内視鏡映像で見せてくれました。うーむ、人間に膝って、こうなってのかー…骨をほじくり出したり、削ったりとぞっとするような映像も…
(内容は内視鏡なのでスプラッタじゃないんだけどね)
<伸二の鼠>
伸二の鼠はかなり厄介だった模様…
写真を撮るたびに違う場所にあったそうな…
関節に入り込んだ試合は、試合開始前に痛んだらしいが
最後まで試合をしたらしい( ´Д⊂ヽ
(4)ハムストリングス腱断裂
欧米人に比べ、日本人は筋力が弱いので、症例が少ない、この負傷。 Jでは2例しかないそうです。その数少ない負傷者が坪井…orz
彼の怪我をしたシーンのムービーを再生。 サッカー専用の競技場なら、外周にトラックがないから無理に踏ん張らずにすみ、負傷しなかったのではないかとのこと。俺たちの埼玉スタジアムが誇らしいです。
ここで坪井のリハビリ映像が…通常のリハビリよりも難しいことを挑戦する姿勢、その間にも上半身のパワーアップのため尋常ではない筋トレを行う姿勢…坪井は本当にプロですよ( ´Д⊂ヽ
<パワーアップ?>
坪井は仁賀先生に「前より速くなるように治してくださいw」 と冗談を言っていたらしいが
復帰後のタイム計測で、本当に以前より速くなってたらしいΣΣ(゚Д゚;)━
☆☆結論☆☆
プロの負傷はリハビリが重要。復帰速度が大きく違う。
リハビリは普段の努力で差が出る。
負傷しないのが良い選手だと言うけれども、
良い選手は負傷しても努力と姿勢が本当に違う。
■その他思ったこと
・2003年のナビスコ決勝、スタッフと選手の努力、オフトの判断が凄かったという話
・怪我に関係のないナビ決勝の映像を見せびらかし、
嬉しそうに語る仁賀先生萌え
・選手の試合中に走る距離は約10km。
距離的にはたいしたことはないかもしれないが
その中で幅広いスペースを使い、スピードを変化させるのが、ハード。
特にライカールトの試合中の軌跡は、ピッチ全体を使っていて凄かった…
・負傷中の選手への声援は大きな力を持つ(リハビリへの意欲)
・質問から生じた話で、選手の特徴を欠点だからと無理に
矯正せずに、長所をのばしてほしいと強調したこと。
そうだよねえ…
すげえ長文で、しかもまとまりがなくてすいません。でも本当に面白い話満載で、行ってよかったっす!今の浦和が、上位を争う力があるのは、こういうスタッフ・体制を作ったことから生じる必然なのだろうなあと思いました。