20050620 埼玉大学公開講座『スポーツマネジメント概論』、清雲氏講義レポ

こちらも私が行けなかったので、中の人・・・ではなく、Iさんにレポを頂きました。

 埼玉大学公開講座『スポーツマネジメント概論』、6月20日の講師は清雲栄純氏。
 さいたま市という大きくはないパイを争うライバルとして『大宮アルディージャ』を位置づけるならば、最大の脅威となるのが、この人の良さそうなオッサンだろう。
 アルディージャが巨大企業の子会社でありながら『地元密着』を謳うことができるのは、この人の存在に拠るのだから。


●『アルディージャのコミュニティ戦略』●

長く古河電工からジェフ市原で力を尽くし、U-18日本代表監督まで努めた清雲氏がアルディージャNTT関東サッカー部)のGM(当時)となることを請けたのは、『親会社が取引先同士である』という縁が契機ではあったものの、『トップを目指したいのか、地域貢献がしたいのか?』という清雲氏の問いに対し、『地域貢献がしたい』という明確な答えが出されたから、だったという。

ゼネラルマネージャーから監督を務め、現在はトータルアドバイザー。普及育成に携わっている、とのこと。

就任当初(99年6月)には、アルディージャがNTTの企業チームであるという大宮市の関係者の意識を変えるため、鹿島アントラーズのホームタウンである鹿島市に視察に行き、ホームタウンのあり方について理解を深めてもらうなどの苦労もあったという。
NTTのような大きい企業が親会社だと資金が豊富で他のスポンサーなど要らないのではないか、といった誤解があり、大宮のチームであろうとしていることを理解してもらうための努力が必要だった。

====資料:アルディージャ元オーナー児玉氏の講演より===

H16(J2) 収:14億 / 支:14億 (実績、2千万円ほど黒字)

H17(J1) 収:23億 / 支:23億 (予定)

(実際に資金は豊富なようですが… ぽーんと胸と背中の広告費を増額してくれましたし)
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 アルディージャのホームスタジアムである『大宮公園サッカー場』は、とても美しいサッカー場(収容人員:12,500名)だが、18,000人の収容が可能な大きいスタジアムに改修を予定している。
 人を入れる箱が大きければ収入が増えるわけではなく、チームの強化・勝利を片輪とすれば、もう片方の車輪である集客(地域密着も含めて)をしっかりとしなければならない。04年(J2)のアベレージが5,800人。05年(J1)の目標は12,500人。現状として平均1万人となっている。

 この12,500人というのは、この数がコアなファンとして定着すれば、ある程度の収入の見込みがついて遣り繰りができるだろう数。ちなみに欧州クラブの観客のランキング150位内(04年)に入れるかもしれない数でもある。

 04年の欧州観客動員(平均)1位はボルシアドルトムントで79,000人。この150位以内には、Jリーグだと15チームがランクインできる。29位がアルビレックス新潟、浦和は31位に相当する。
 BVBは、マンチェスターUやレアルマドリッドに比べればマイナーなチーム。単純に大きなスタジアムを所有しているからではなく、地域密着ができているから観客が集められる。


具体的な地域貢献(密着)として、

◆ 子供を対象に
・サッカースクール
・サッカー教室
・サッカーキャラバン

◆ 地域の指導者を育成する
コーチングアカデミー

◆ 埼玉出身、埼玉育ちの選手を
・ユース,ジュニアユースチーム

====参考:アルディージャ元オーナー児玉氏の講演より===

 これまでの活動が評価され、『Jリーグアカデミー』の『H17育成センター』の認定を受けている。

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 『青少年の健全な育成』と『地域貢献』を2本柱の目標にしているのは、レッズの犬飼社長のお話と一致します。
 犬飼氏の構想が『浦和から日本を変える』というニュアンスを感じたのに対し、清雲氏のお話は『大宮(埼玉?)を子供たちのために良くしたい』という意識を強く感じました。



●『総合型地域スポーツクラブ構想』●
ここから、話が『大宮アルディージャ』から、『大宮におけるスポーツクラブ』へとスライドしていきます。

◆ 行動記録
・勉強会の実施(2002.04〜2003.03)
・運営会議の実施(2003.04〜2004.03)
・運営会議・設立準備委員会の実施(2004.04〜)

◆ 活動記録
・第1回/第2回 説明会
福田正博氏 講演会1/2
・ミニテニス講習会/Jazzの夕べ/沖縄料理教室/ビリヤード教室
・ニュースポーツ教室/卓球教室/親子体操教室/バスケット教室
(サッカーに限らない、スポーツに限らない幅広い活動を行っている)

◆ 地域クラブの理念
・(ソニックシティ前公園などでたむろするような中高生も含めて)子供たちの居場所づくり
・地域における『コミュニティ』の復活

◆ 50年構想
これらを100年構想ではなく50年構想で(と、ルイスブルグのスポーツシューレの美しい画像を見せながら)
・世界レベルの選手も招ける施設と、そこで子供たちも一流と触れ合える環境を
・大人も子供もあらゆるカテゴリーを越えたコミュニティ作り


イメージ画像として、欧州のさまざまなクラブの、さまざまな施設を組み合わせて、スタジアムゾーンやショップゾーンやフードゾーンといった『ゾーン』の構想を、ぱらぱらと映す。こういったものを将来的に旧大宮の4区にそれぞれ作り、地域のコミュニティを作りたいという構想。だという。

さいたま市はスポーツに対する理解があり、担当のセクションも用意されているので、連携しながら進めることが出来るとのこと。


ここまでが講義で、最後にJFA作成の『地域密着のあり方を広める』のキャンペーンビデオを観ました。 日本国内で、Jリーグ100年構想のために作られたものを編集したものと思われます。
欧州におけるスポーツクラブの地域密着という、美しい理想です。


● 質疑応答にて・・・

 Q.『子供たちの居場所を作る』ということに対して、駅前にたむろする子供たちの親たちに対するアプローチを問われて。

 A.それが大事だと思っているし、サッカースクールの親たちは子供に夢中なので、その親に新しい楽しみの誘いなどをしたいと考えているとのこと。
Q.『レッズランド』構想と似ているが、連携や住み分けについてを問われて。
A.レッズと話し合うことはしていないので、浦和のコトは分からない。そういう大規模なモノではなく、旧大宮の4区に密着していく。

 ただ訥々と『大宮アルディージャの未来』という夢を語られ続けた。という内容でした。 これは安直に大宮アルディージャの観客を増やそうという近視眼的なものではなく、アルディージャを足がかりに、大宮という地において『さいたまスポーツクラブ』を育て、孫の代までを目標に、地域スポーツクラブを中心とするコミュニティの構築を目指す、壮大な地域再生の構想であり美しい未来への夢の物語であるように感じました。

以上


清雲氏のひととなりはUGタンも書いてるので参考までに。