相馬と黒部のインタビュー@Jリーグ選手協会【浦和レッズ】

Jリーグ選手協会 ---JPFA---
PLAYER'S INTERVIEW
FILE 014 相馬崇人×黒部光昭選手 [浦和]
http://j-leaguers.net/special/player2006/file014.html

JPFAの目指すサッカー選手の社会的・金銭的地位の向上は、サッカー界全体の発展と地域密着の深度と共栄していく関係にある。どうすればサッカーがより一層発展し、選手の生活が安定していくのか。各支部のリーダーたちに話を伺った。


=========================================================

― 二人とも観客動員の多い浦和に今年から移籍加入していますが、前所属チームと比較して気がついたことはありますか?

相馬
 ヴェルディでは地域密着が足りなかったのかな、と感じます。浦和に来てみると、どんなところを歩いてもサッカーが盛んで、とても目立ちますよね。しっかりと根付いている。地元の人がたくさん応援してくれます。もちろん、他のチームだって努力しているのでしょうけど、ここまでは根付いていないということだと思います。ヴェルディの場合はホームタウンを川崎から稲城に替えたこともあって、浸透するのはなかなか難しかった部分はあるんですけどね。

黒部
 相馬が言った地域密着が足りないというのは僕も感じます。僕がいた京都は練習場が京都市の中心部からかなり離れたところにあるんですね。土地が必要になることなので、経営的に考えるとそれも当然なのかも知れませんが、やはり地域密着という意味では練習場が市の中心部にあった方がいいですよね。練習場で触れあうことによって、試合にもより一層足を運んでくれることにもなるし。

― 練習場が近くにある方が親近感が湧くのでは、ということですね。

黒部
 そうですね。やはり練習場が選手たちを一番身近に感じられる場所だと思うんです。お疲れさまって声をかけたりしてコミュニケーションがとれるのは、練習場でしか出来ないことですから。中心部から近くて、お客さんたちに見に来てもらえるような練習場…この大原のような練習場…が必要なんだと思います。大きなコストがかかるかも知れませんが、還元できる可能性も多くあるところです。人を増やすきっかけには必ずなると思うんです。

― サッカー選手全体の年俸を向上させていくためには、お客さんに多く来場してもらうことが必要です。それには選手の協力も必要になりますが、なにかアイディアはありますか?

相馬
 集客という意味では、ヴェルディ時代に小学生の頃在籍していた少年団(川崎・南百合丘SC)の子供たちを500人くらい招待したことがあります。もちろん、自腹でチケットを購入して。(笑)とはいえ、個人負担で招待をするのは限界もありますので、選手会で負担したり、席が埋まらない試合ではチームから提供を受けて、選手が子どもたちを招待するのもいいと思いますね。

黒部
 僕も京都時代に自分でチケットを購入して「黒部シート」というシートを用意して、子どもたちを招待していました。

相馬
 チームも集客に成功しているNFLの手法を取り入れるとなど、広く考えた方がいいですよね。

― 選手会自体の活動はどうですか?

黒部
 いろいろと活動が難しいというのはあります。選手会でなにかをしようとした時に、若い選手の案とベテラン選手の案は全然違うんです。それを選手会全体の意思として、どう統一していくかということになります。例えば、セレッソ時代のことですが、練習場にはシャワーと家庭用の風呂だけで、数人が一度に入れるような風呂がなかったんですね。練習場のある西成区の条例で大きい風呂が入れられなかったらしいんです。身体を温めるための家庭用の風呂が少しあるくらいだったんです。プロとしての身体のケアを考えれば必要だと思うので、チームから区に交渉して欲しいところだったんですけど、選手の中でも意思が統一されているかというとそうでもないんですよね。若い選手は「シャワーだけでいいじゃん」って思うかも知れない。ベテランが欲しいと思っても、選手会の意思はなかなか統一できないわけなんですよね。

― 浦和に来て感じる、チーム作りの上手さってどんなところですか?

相馬
 レッズはとてもまとまっていますし、以前Jリーグでプロ選手をしていた人が、フロントに入っているんですよね。そういうところがいいのではないでしょうか。

黒部
 うん、それはあるね。選手の気持ちもそれなりにわかってくれるしね。

相馬
 プロ選手を経験していないとわからない部分…感情や契約についてのことなど、元プロ選手じゃない人に伝えようとしても、微妙に伝わらないところがあるんです。そういう意味ではレッズは伝えやすいですね。

黒部
 経営サイドの方がプロ選手出身ではなく、普通の企業から出向されている方だと、僕たちが現在もらっている給料を「もらいすぎだ」と捉えている人もいるんですね。でも、サッカー選手の現役は30歳くらいまでしか出来ないんですから、言い換えると、30歳以降の給料や退職金などを先にもらっているようなものだと思うんです。そういう気持ちが伝わらなかったりする。

相馬
 確かにそれを理解してもらうのは難しかったりしますよね。

黒部
 だから相馬の言う、プロ経験者のフロント入りが必要なんだと思うんですよね。契約交渉の席でフロントの人から「チームを徐々に良くしていきたいと考えている。5年後にはこういうチームにしたい。だから給料を抑えたい」と言われても、30歳前後の選手だったらあと2、3年しかプレーできないかも知れないんです。5年後の目標に向かって財政を考えているから少し我慢してくれって言われても納得しづらい。プロ社会なんですから、僕らは翌年クビになるかもしれない。プロ経験のある人であれば立場があれども「僕らは将来が不安でしょうがないんですよ」と話した時にも、「ああ、俺もそうだったなあ」と少しは理解してくれるだろうし。そういう理解をしてくれる人が浦和には多いので、選手としてもいいムードになれますよね。

相馬
 僕は話すことがなくなりましたね!(笑)

― ありがとうございました。